現在、申請受付が行われている一時支援金。
昨年の持続化給付金と異なり、一時支援金では登録確認機関による事前確認手続きが必要となりました。
当事務所は、元々は顧問先企業のために確認機関に登録申請をしたのですが、登録確認機関の連絡先リストが公表されたため、関与先以外の事業者の方からも事前確認の依頼が来てしまい、それが想定をはるかに超える数。
「浦安みたいな小さな市でも、こんなにたくさんの事業者がいるんだ~」と妙なところで感心したりして。
少し考えて、当事務所としては、一時支援金は救済策であることを考慮して完全無償ボランティアで対応するものの、無理はせず、通常業務に支障が生じない範囲で事前確認させていただくことにしました。
そうは言っても、事前確認(所要時間は20分ほど)以外にも、ZOOM会議の設定や事前に準備が必要な書類のメール連絡、各種ご質問への対応、確認の登録手続き等、必要な作業は諸々あり、やはり何かと時間は取られます。
まる一日、電話対応に追われてしまった日もあり、「引き受けなければ良かったかな」と少し後悔したこともありましたが、やはり、何であっても、新しいことはやってみるものですね。
思わぬ発見(?)がありました。
今回、当事務所に事前確認の依頼のあった事業者の方々は、当然ながら顧問税理士をつけておらず、自分で事業所得の確定申告をしている方々。
見方を変えれば、当事務所が、日頃、関与することのない方々ばかりです。
そういう方々と会話をしていて気づいたことが、
白色申告者であっても帳簿作成の義務があることを知らない人がいる!
ということ。
ちょっとした衝撃でした(笑)
「そんなモンでしょ」と一般的には思われるのかもしれませんが、専門家というのは、実は意外に市井の実態を知らないものです。
事前確認では、2019年1月から2021年対象月までの売上台帳などの帳簿書類があることを確認することになっているのですが、「帳簿は作っていないんですよね」と答える方が何人かいました。
事前確認では、帳簿がない合理的な理由があれば良しとすることになっており、帳簿に代替する書類の有無を確認できれば、当事務所では事前確認登録を行いました。
しかし、こういった判断というのは、それなりに難しいものでもあります。
正直、帳簿がない方への対応は、かなり神経を使い、疲れました。
また、登録確認機関により、判断も分かれるように思います。
「一時支援金の事前確認はできたとしますけれど、税制上、事業所得者は帳簿作成の義務があるんですよ。」と話をすると、「ええっ、そうなんですか? 知りませんでした!」と反応されて、こちらも、「ええっ、知らなかったんですか?」と、お互いにビックリ(笑)
「これからは、きちんと帳簿を作成します。」と言っていただけて、やはりウチの本業は正しい申告のサポートなので、今回の事前確認手続き、やってよかったな、と、予定外のところで思ったりしました。
新型コロナウイルスという異常事態から、突発的に様々な支援金制度が立ち上がりましたが、改めて感じたのが、「常日頃から、ルールに従ってきちんとした対応することの大切さ」。
会計税務的には、事業者であれば、帳簿をきちんと作成し、きちんと確定申告をすること。
「きちんと確定申告」の意味は、確定申告書の第一表だけでなく、収支内訳書や青色申告決算書も記載を省略せずにきちんと記入すること。
法人であれば、法人事業概況書も記載を省略しないこと。
『法人事業概況書』は、確定申告に直接関係する書類ではないため、作成していない、あるいは曖昧に作成していた、という事業者さんも多かったようで、昨年の持続化給付金の申請時には税理士会等に「どうしたらいいのでしょう」という問い合わせが多数来たと聞いています。
ここに記載される月別売上で給付金額や支援金額が判断されることになるなんて、2年前には誰も想像できなかったことでした。
やるべきことをきちんとやることが大切。
時間はかかるようで、結局は、それが一番の近道。
自省を込めて、本当に、そう思います。
【参考】
▼ 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について(国税庁サイト)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/index.htm
▼ 帳簿の記帳のしかた-事業所得者用-(国税庁サイト)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/kichou03.pdf
▼ 白色申告の方の記帳義務と帳簿等保存義務とは(国税庁YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=S2m8aSDsnP8