東京オリンピック2020では、日本柔道最高の金メダル9個を獲得したとか。
柔道男子が獲得した金メダル5個も、過去最多だそうです。
すごいですし、素晴らしいですね。
関係者の皆様方には、本当におめでとうございます。
「柔道」が「JUDO」になり、2012年ロンドンオリンピックでは柔道で金メダルを1個も取れず、当時は「これも時代の流れ。日本の柔道界は終わった。」みたいな空気が流れていた記憶があります。
私個人も、柔道に詳しいわけではないのですが、「JUDOはもう世界のものになって、日本の時代は終わったんだろうな~」と、漠然とですが思っていました。
けれど、4年ほど前、日本柔道男子監督の井上康生氏の講演を聞く機会があり、その内容がとても素晴らしく、「この人の下でなら、日本柔道は強くなれるのではないか」と感じたのですが、本当にそうなってしまい、改めて当時の講演会でのメモ書きを読み返してみました。
せっかくですので、内容をシェアしたいと思います。
急いで走らせたメモ書きな上、記憶も薄れているので、一部は私の理解違いの部分があるかもしれません。その点はあらかじめご了承ください。
井上康生日本柔道男子監督 講演会の記録
講演会概要
- 開催日: 2017年11月16日
- 開催場所: 公認会計士フォーラム
- タイトル: 「日本柔道復活への道」
最初に、監督就任時に次の3つの目標を定めた、というお話がありました。
1.世界チャンピオン、オリンピックメダリストの育成
2.生きる力を養う
3.柔道で培ったもので社会に貢献していく
この3番目の目標を「柔道の究極の目標である」と言い切っていました。
また、「覚悟」についても述べられていました。
「命がけで戦う覚悟のある者だけが残れ」
監督就任時に選手たちにかけた最初の言葉だそうです。
井上監督自身、覚悟無くして監督を引き受けられなかったのだとか。
これまでのメダリストがメダルを取れた理由は「覚悟」にある。
そんなことも言っていました。
このような前段のお話のあと、以下の4つのテーマ別に講演が進められました。
― 自己形成
― 強さ
― 組織
― スポーツの価値
以下がお話の要点になります。
自己形成について
■ 自己マネジメント能力をつける
まずは己を知ること。
弱点で強みが帳消しになってしまうことがある。
強くなるためには、自分の強みと弱みを自分で把握し、弱みを平均レベルに改善することが大切。
自分しか持てない武器、自分しかできないことを創り出すこと。
「この点で優れていたのが大野将平選手」と個人名を挙げていましたが、大野選手は今回のオリンピックで見事、柔道男子73キロ級で金メダルを獲得しています!
■ 自分で決める
自分で決めれば、頑張ることができる。
自分で決めれば、耐えることができる。
他の人から言われてやるのでは、弱い。
■ 創造の源は知識にある
己を知り、自分で考え、自分で決める。
その際に大切になるのが 創造力。
創造力の源は知識にある。
あらゆる分野において、選手たちには様々な体験をさせ、経験談を聞かせた。
どのような体験をさせたのか、詳細を書き留めていませんが、座禅や陶芸という言葉が記憶に残っています。
■ 人間力の向上
人間力の向上は人とのつながりにある。
強さについて
■ 一流と二流を分けるもの
一流と二流を分けるもの。
それは準備力である。
準備にはネガティビストであれ。
試合にはポジティブであれ。
■ 常に進化を意識する
失敗や変化への恐れが人間にはある。
現状維持で満足していれば、落ちていく。
継続は力なり。
進化のためには、当たり前のこと、目の前の小さなことをコツコツと積み重ねていくことが大切。
元大リーガーのイチローも「地道なこと、小さなことを積み重ねていくことが大切」と言っている。
■ グローバル化とナショナリズム
柔道が世界に広がり、各国が自国の格闘技の技をJUDOに取り入れる時代。
日本の「柔道」にだけこだわっていては、勝てない。
我々は海外のJUDOに学ぶ必要がある。
世界基準の目線を持つこと。
その一方、日本がこだわるべきは「JUDO」ではなく「柔道」である。
■ 明るくあれ
明るい人、明るい集団には、福が来る!
組織について
■ 目指す組織像
最強かつ最高の組織を目指す。
■ マネジメントの在り方
生きがい、やりがいを持てる環境作りが大切。
監督やコーチ自身が、世界一流の戦略家・戦術家でなくてはいけない。
■ 時代への対応
慣例や通例は、時には非常識である。
時代時代で変わることを、しっかりとキャッチしていく。
世代間の違いへの対応も然り。
育ってきた時代や環境が違うのだから、世代間で考え方に違いがあるのは当たり前。
一方、違ってはいけないこともある。
その見極めが大切である。
スポーツの価値について
スポーツの価値について。
この話に関するメモ書きが、何故かノートに残っていません。
コロナ禍でオリンピックが開催されている今こそ、この話が大切なのに、残念です。
以上のような講演会の内容でしたが、志の大きさ、視野の広さ、人間愛、細かなところにまで気を配る繊細さが感じられ、改めて井上監督の偉大さを感じます。
言うだけでなく、実際にこれらのこと全てを実行してきたからこそ、東京オリンピックで日本柔道が多くのメダルを獲得できたのでしょう。
ご本人も「明るい人・集団には福が来る」と言っていましたが、井上監督自身、おおらかで明るくて包容力のあるお人柄であることが講演会を通じて伝わってきたことを思い出します。
講演会慣れしているのでしょうが、トークもお上手でした。
私個人は、当時のメモを読み返して「創造の源は知識にある」のお話が、とても印象に残りました。
みなさんには、どの言葉が心に残りましたでしょうか?