個人事業・所得税

個人事業・所得税

個人事業用の車を譲渡した場合(譲渡損)の会計処理と確定申告方法

個人事業の会計処理に関しては、法人の会計処理(企業会計)と異なる部分があります。

ですので、簿記の知識を持っている方ほど、個人事業の会計処理で間違いが起きやすかったりします。

よくある事例が、事業で使っている車を譲渡した場合の会計処理です。

 

150万円で取得し、減価償却累計額が100万円の車を10万円で売却譲渡した場合。

企業会計では次のような仕訳になります。

借方借方金額貸方貸方金額
現預金10万円  車両  150万円
減価償却累計額100万円
車両売却損40万円

ですが、個人事業の場合、仕訳は次のように行います。

借方借方金額貸方貸方金額
現預金10万円  車両  150万円
減価償却累計額100万円
事業主貸40万円

  

「事業主貸」は損益勘定ではないので、この会計処理だけ見ると、あたかも生じた損失をマイナスできないように見えますが、別の方法で損失額をマイナス処理します。

   

法人に課せられるのは法人税、個人事業主に課せられるのは所得税です。

所得税については、次の区分で取引を整理して、税額計算を行います。

1.利子所得
2.配当所得
3.不動産所得
4.事業所得
5.給与所得
6.退職所得
7.山林所得
8.譲渡所得
9.一時所得
10.雑所得

事業用の車であっても、それを譲渡した場合は「譲渡所得」となります。

  

上の例だと、譲渡所得は ▲40万円となります。

資産の譲渡については、資産の種類によって総合課税と申告分離課税の2つの方法がありますが、事業用の車を譲渡した場合は総合課税扱いとなります。

譲渡所得の赤字に関する損益通算ルールは複雑なのですが、事業用の車両を譲渡した際の赤字は事業所得と損益通算することができます。

ですので、税金計算的には、個人事業の損益計算書に車両売却損を含めて会計処理してしまっても、結果は同じになります。

ですが、申告上、車両売却損は事業所得とは区分して行います。

  

企業会計的な思考で考えると、「なんで??」と不思議にも感じる処理なのですが、会計と税は基本的なところで考え方が異なります。

こういうもの、と納得するよりありません。

  

ところで、確定申告書の第二表の下にある「事業税」の表に「事業用資産の譲渡損失など」を記載する欄があります。

ここへの記載も忘れないようにして下さい。

個人事業税は、(事業所得-290万円)× 税率 で算定されます。

事業所得には事業用資産の譲渡損失が含まれていませんが、ここに記載することで、事業用資産の譲渡損失を事業税算出の計算に組み入れてもらいます。