個人事業主の方で、小規模企業共済制度に加入し、毎月掛金を支払っている方は多いかと思います。
小規模企業共済制度は、小規模企業者が掛金を積み立て、廃業や引退に備える制度で、小規模企業者のための退職金制度に相当するもの。
掛金は全額所得控除が受けられ、共済金を一括で受け取る場合は退職所得扱いできるなど、節税の観点からもとても魅力的な制度です。
小規模企業共済は、個人事業主本人だけでなく、個人事業主の配偶者や後継者などの「共同経営者」も加入が認められています。
このため、個人事業主本人だけでなく、共同経営者である配偶者の方も一緒に加入しているケースもよくあります。
この際、注意が必要なことが1点。
配偶者の掛金を個人事業主の方が負担して支払っている場合、配偶者分の小規模企業共済の掛金分は所得控除することができません。
所得控除ができるのは、個人事業主の方、本人分の掛金のみです。
社会保険料については、配偶者や家族のものであっても、支払った方の所得控除とすることができます。
生命保険についても、契約者名義が誰であれ、保険金を負担した方の所得控除とすることができます。
医療費についても、医療を受ける方が誰であれ、その医療費を支払った人の所得控除とすることができます。
このため、同じように考えて、小規模企業共済についても「支払った人の所得控除にできる」と思っている方が多くいるのですが、社会保険料などとは異なりますので、注意が必要です。
扱いが異なる理由は、小規模企業共済等掛金については、平成15年1月28日に、次のような裁決が出ているからです。
請求人は、所得税法第75条《小規模企業共済等掛金控除》第1項の規定は「居住者が、各年において、小規模企業共済等掛金を支払った場合には、その支払った金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。」としていることから、請求人が支払っている以上、請求人の青色事業専従者の小規模企業共済掛金も同法の規定に該当し、請求人の所得控除の対象とすることができる旨主張する。
国税不服審判所:https://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0703000000.html
しかしながら、同法の規定は、居住者が、各年において、自己が契約した小規模企業共済法の共済契約に基づく掛金を支払った場合に、その支払った金額について所得控除を認めるものであり、請求人が請求人の青色事業専従者を共済契約者とする小規模企業共済掛金を支払っていたとしても請求人の小規模企業共済等掛金控除の対象とはならない。
小規模企業共済等とは、次のものをいいます。
- 小規模企業共済法に規定された共済契約(旧第二種共済契約を除く。)に基づく掛金
- 確定拠出年金法の企業型年金加入者掛金及び個人型年金加入者掛金
- 条例の規定により地方公共団体が実施する心身障碍者不要共済制度に係る契約で一定の要件をそなえたものの掛金
個人事業主の方で、個人型確定拠出年金に加入されているかたも多くいますが、所得控除の考え方は小規模企業共済に同じになります。
所得税については、内容別にそれぞれ決まりがあり、他のケースから類推して「こうだろう」と判断すると誤る可能性があります。
ひとつひとつ、丁寧に確認することが大切です。