相続でアパートなどの建物資産を引き継ぎ、相続人が継続して不動産賃貸業などを営む場合。
相続人が行う減価償却計算方法は、被相続人が行っていた減価償却計算方法と変わる場合があります。
変わるか変わらないかの目安は、その建物資産が平成19年4月1日以後に取得されたものであるか否か、です。
減価償却方法については、過去に何度か税法が変わりました。
建物に関しては、平成19年(2007年)3月31日までに取得した建物には旧定額法、同年4月1日以後に取得した建物には(新)定額法を適用します。
旧定額法は残存価額を残して償却計算する考え方でしたが、(新)定額法では残存価額を計算に考慮しなくなりました。
このため(新)定額法の方が償却率は高くなります。
相続人の減価償却計算に際しては、相続人は被相続人が保有していた建物資産の取得価額、取得時期、耐用年数、未償却残高を引き継ぎます。
減価償却方法は(新)定額法 を適用します。
仮に被相続人が建物資産を取得したのが平成19年4月1日以降であれば、被相続人の償却方法は相続人んと同じとなります。
相続した建物が住宅用途である場合、構造別の新旧償却率は次のようになります。
構造 | 耐用年数 | 旧定額法償却率 | (新)定額法償却率 |
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄骨コンクリート造 | 47年 | 0.022 | 0.022 |
れんが造、石造またはブロック造のもの | 38年 | 0.027 | 0.027 |
金属造のもの(骨格材の肉厚4mm超) | 34年 | 0.030 | 0.030 |
金属造のもの(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 27年 | 0.037 | 0.038 |
金属造のもの(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 | 0.052 | 0.053 |
木造または合成樹脂造のもの | 22年 | 0.046 | 0.046 |
木骨モルタル造のもの | 20年 | 0.050 | 0.050 |
相続した建物の減価償却は 取得価額×(新)定額法償却率 で計算します。
減価償却の計算月数は、月の中途であっても1か月で数えます。
このため、被相続人と相続人それぞれで減価償却計算を行う場合、計算上使用する月数は両者合わせると13か月となります。
新でも旧でも償却率が変わらない場合もあり、変わる場合もあります。
相続した建物を初めて減価償却する年度では、必ず償却率を確認するようにして下さい。
資産の細目別の耐用年数と償却率については、『減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号)』に定められています。
ここでは建物資産のケースで説明を行いましたが、他の相続固定資産についても減価償却計算の考え方は同じです。
個人事業主であれば、届出を出していなければ、すべての資産について(新)定額法が適用となります。