先週3月18日に、『事業再構築指針』並びに『事業再構築指針の手引き』が中小企業庁から公表され、事業再構築とは何か、が具体的に定義されました。
5つの形態が示され、その内容については、『事業再構築補助金審査でより高い評価を受けるために』を参照ください。
今回は、それぞれの形態に共通する「製品等の新規性要件」について考えてみたいと思います。あくまでも私見ですので、予めご了承下さい。
『事業再構築指針の手引き』によると、製品等の新規性要件を満たすためには、以下の4つの要件を全て満たす必要があります。
① 過去に製造等した実績がないこと
② 製造等に用いる主要な設備を変更すること
③ 競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
④ 定量的に性能又は効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
このうち、” ③競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと” については、どう考えれば良いのでしょうか?
” ③競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと” の内容は、次のよう説明されています。
競合他社の多くが既に製造等している製品等を、新たに製造等することは容易であると考えられるため、申請に際しては、競合他社の動向を調査し、新たに製造等する製品等が、競合他社の多くにおいて製造等されているものではないことを示すことが必要となります。
『事業再構築指針の手引』P.4
この文章だけ読むと、「マーケットに存在しない新しい製品等を開発しなくてはいけない」と読めなくもないのですが、そうなると、かなり厳しい条件になります。
また一方で、経済産業省HPの「事業再構築補助金に関するよくあるお問合せ」Q38には、「フランチャイズ化することで事業再構築を行う場合は対象となり得ます。」と回答があります。
既に市場に出回っている製品等を活用する事業を新規事業と認めないわけではないことが読み取れます。
『事業再構築指針の手引き』から ” ③競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと” の具体例を拾うと、次のようになっています。
パウンドケーキを製造している事業者が、競合他社の多くが既に製造しているにもかかわらず、新たに焼きプリンを製造する場合。 | 認められない |
同種の航空機用部品を製造している競合他社の多くが、同種の医療機器部品を製造していない場合。 | 認められる |
都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいる競合他社の多くが、レンタルオフィス業を営んでいない場合。 | 認められる |
日本料理店を営んでいる競合他社の多くが、焼肉店を営んでいない場合。 | 認められる |
同種のプレス加工用金型を製造している競合他社の多くが、同種の産業用ロボットを製造していない場合。 | 認められる |
レンタカー事業を営んでいる競合他社の多くが、貸切ペンション経営を行っていない場合。 | 認められる |
『事業再構築指針の手引』P.4 には ”「新規性」とは、”事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。” と注釈があります。
総じて、現在行っている事業とは全く異なる事業を行うのであれば、製品等の新規性要件は満たすものと解されます。
このため、フランチャイズへの加盟も、現事業と全く異なる業種であれば、事業再構築の要件を満たす可能性がある、ということになります。
今回の事業再構築補助金の趣旨は、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すこと、にあります。
「今の事業より成長性が高く、将来的な売上の伸びが期待される事業を見つけ、そこに進出して下さい、そのあと押しはします」ということでしょう。
言うのは簡単ですが、まったく異なる事業に進出した場合、その後の経営は、そう容易なものではありません。
全てをイチから勉強し直すくらいの覚悟と準備が必要です。
事業再構築補助金は経営革新等支援機関と協同で取り組むことが要件となっていますが、新しい事業を成功させるためには専門家の支援と助言が欠かせないと判断したためと思われます。
事業再構築補助金申請のための事業計画書の作成をお手伝いいたします。